ジャパンドリーム

大金持ち

私が昔働いていた会社の同僚に、仲の良い男性がいました。

今でも交流があります。 名前は池畑くん(仮名)。

 

彼は、兵庫県と岡山県県境、周りを山に囲まれた小さな町に生まれ育ちました。

 

その町の主たる産業は農業。 

 

今日は、この田舎町で、ある日 突然にして巨万の富を掴んだ小学生のお話をいたします。

もちろんネタ元は、池畑くんです。

 

この町では、毎年正月が明けて3学期がスタートした翌日、お正月にもらったお年玉をムダ使いさせない様に「良い子の貯金会」的な恒例行事が農協主催で行われていました。

 

農協職員が学校の体育館に特設窓口(折りたたみテーブル+パイプ椅子)を設置し、子供からお年玉を巻き上げるイベントです。

 

毎年、お年玉だけでなく、お小遣いもコツコツ貯めて、残高の増えた通帳を持参する賢い子供。

預金した翌日には全額引き出して散財し、通帳の行方もわからなくなてしまったバカな子供。

それぞれが特設の窓口に行列を作ります。

 

そんな「良い子の貯金会」の翌日、池畑くんの友人が新調した通帳を片手に、朝からニヤついた顔で「おい、放課後、駄菓子屋に行かへんか」と誘ってきました。

なんでも好きなモノを奢ってくれると言うのです。

 

断る理由なんてありません。

しかし、どこからそんなお金が。。。?

 

「ハハァ~ンお年玉やな、いくらもらったんやぁ」

 

池畑くんは、率直にソレを友人に尋ねました。

 

すると友人は上から見下ろす目線をしつつ、通帳を開き中を見せてくれたのです。

彼の通帳の残高は、、、

 

一、十、百、千、万、十万、百万、、、千万!!!

 

なんと、そこには50005000(5千万5千円)!!!!!!

 

 

なぜに?

 

「このコトは絶対に秘密やで」 と、男と男の固い約束をして、池畑くんは、そっとカラクリを語りだしました。

 

実は、、、

 

昨日の農協集金会(子供たちは その様に表現していたらしい)に、長者小学生はお年玉の5,000円を持参しました。

行列に並び自分の番が来たので、特設窓口の職員に5,000円と住所・氏名の書いた紙、そして持参した印鑑を手渡しました。

 

すると職員は、台帳らしき大きなノートに5,000円と書き込み、まっさらな通帳にノートに記載されていた番号を転記。つまり、この転記した数字が長者小学生の口座番号。

 

それから、表紙と裏表紙に名前を書くと印鑑を押して、1ページめくり入金欄に「5,000」とスタンプ。

 

40歳以上の方はご存知かもしれませんが、昔の金融機関、特に田舎の方では職員が手作業で通帳の記入を行なっていました。

 

そう、コレは今から40年ほど前の話ですから、この町の農協も基本は手作業。

ましてや出張窓口ですから、完全手作業です。

 

さて、事件はココで発生したのです。

 

最初に押した5,000のスタンプ、写りがイマイチだったため、職員はその左横に再度5,000をスタンプ。

そして、先に押した5,000を二重線で消して、訂正印を押そうと思っていたのでしょう。

 

ちょうどそのトキ、列の先頭に並んでいた子供が急に騒ぎ出し、違う子供と掴み合いのケンカを始めました。

どうやら、行列の先頭に悪ガキが割り込もうとしたので、先頭の子供がエキサイトした様なのです。

突然、大騒ぎになり職員はケンカを収めようと離席。

 

ケンカはスグに収束したのですが、子供は「待つ」とか「考える」が元来苦手なモノ。

 

長者小学生は、預金手続きが終わったと自分で決め込んで、特設窓口のテーブルに放置されていた通帳を手に取って、そのまま走って教室に帰ってしまいました。

つまり、長者小学生の通帳には「5,0005,000」のスタンプ。

 

長者小学生も最初は、気がついていなかったらしいのですが、家に帰って通帳を見てみると、大金持ちになっているコトが発覚。 親にも内緒にしており、そのお金で毎日 駄菓子屋に通うコトにしていた様です。

 

さて、町イチバンの長者、しかも小学生が誕生したのですが、コレを知ってしまったのが池畑くん。

 

彼はとても口が堅い。無口なくらい。

でも、とても意思が弱い。 今でも自覚しているほど意志薄弱。

 

3時間目の授業が始まる頃、学校で長者小学生が誕生したコトを知らないのは、飼育小屋の中を歩いている鶏ダケだった様です。

 

その結果、お昼から先生に手を引かれ、長者小学生は農協に出頭させられたとのコト。

 

現在の金融機関出納は全てコンピュータ処理で印字。

こんなミスは起こらないでしょう。

 

それでも、ナニかの弾みで大金が振り込まれていないかと思ってしまうのが人間。

本日は月末なので朝イチで銀行へ行ったのですが、全員そんな顔してATMの前で黙々と操作していました。