中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告

平成 29 年7月 25 日

 

 

1 はじめに

 

平成 29 年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、

目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くした

ところである。

 

 

2 労働者側見解

 

労働者側委員は、最低賃金の水準が依然として低く、地域間の格差が拡大傾向にある

との問題意識から、一般労働者の賃金改定率だけではなく、あるべき賃金水準の議論を

行うことが必要であると述べ、「円卓合意」や「雇用戦略対話合意」も踏まえつつ、

生計費を考慮し、当面目指すべき水準として、最低賃金額が 800 円以下の地域を

なくすことが急務であり、Aランクについては 1,000 円への到達を目指すべきであると

主張するとともに、これらの水準の到達時期については、経済環境等にも配慮しつつ、

3年以内とすべきであると述べた。

また、現在の地域別最低賃金額の水準で法定労働時間働いた場合でも年収 200 万円に

到達せず、最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号)第1条の「賃金の低廉な労働者の

労働条件の改善を図る」という法目的に鑑みて低水準であると述べるとともに、最低

賃金近傍で働いている労働者の中には、正社員として働く機会がないこと又は家庭の

事情があること等により非正規雇用で働いている者が少なくないことから、雇用形態に

関わらず、働いて稼いだ賃金で家族とともに生活し、将来展望が描ける社会を実現

すべきであると主張した。

さらに、目安制度が導入された昭和 53 年当時に比べ、生活文化圏や経済圏が広範囲

となり、隣県との格差拡大が働き手の流出にもつながっている状況を是正するためには、

地方最低賃金審議会の自主性発揮を促すことが必要であり、目安額を示す際はこうした

点を考慮すべきであると主張した。

最低賃金がその機能を発揮するには一定程度の影響率は必要であり、また影響率上昇に

よる雇用への悪影響は出ていないと主張した。

労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の

公益委員見解については、不満の意を表明した。

 

 

3 使用者側見解

 

使用者側委員は、中小企業の景況感は緩やかながら改善傾向にあるものの、その

動きは大企業に比べて鈍く、休廃業や解散する企業の件数が過去最高となったことに

加え、人手不足の影響が強まっており、先行きの不透明感は依然として強いとの

認識を示した。

また、「働き方改革実行計画」(平成 29 年3月 28 日働き方改革実現会議決定)に

記載されている最低賃金に関する内容は、これまで政府が示してきた方針と同様の

ものであり、その意味は、毎年機械的に最低賃金を3%程度引き上げるのではなく、

名目GDP成長率が3%に達しない場合には、そうした状況を考慮しながら最低賃金

の引上げ額を議論することであると主張した。

さらに、最低賃金の大幅な引上げには、当該引上げの影響を受けやすい中小零細

企業に対する効果的な生産性向上等の支援策の実施や拡充が不可欠である一方、

政府の施策の十分な成果が見られないまま最低賃金の大幅な引上げだけが先行して

実施されてきたとの現状認識を示した上で、今年度についても合理的な根拠を示

さないまま、最低賃金の大幅な引上げの目安を提示することとなれば、目安制度、

ひいては最低賃金の決定プロセス自体が成り立たなくなるのではないかとの強い

懸念を表明した。

また、今年度の目安審議に当たっては、諮問文で求められている働き方改革実行

計画への配慮は必要であるが、目安審議は、最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号)

第9条に定められている最低賃金決定の3要素を考慮すべきであり、これらを総合

的に表している賃金改定状況調査結果のとりわけ第4表を重視するとともに、急激

に上昇した影響率を十分に考慮した、合理的な根拠に裏打ちされた目安を提示すべき

であると主張した。

使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の

公益委員見解については、不満の意を表明した。

 

 

4 意見の不一致

 

本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ

目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、

遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。

 

 

5 公益委員見解及びその取扱い

 

公益委員としては、今年度の目安審議については、平成 29 年3月 28 日に中央最低

賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度の在り方に関する全員

協議会報告」(以下「平成 29 年全員協議会報告」という。)の3(2)で合意された

今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「働き方改革実行計画」(平成29 年3月

28 日働き方改革実現会議決定)に配意し、諸般の事情を総合的に勘案し、下記1の

とおり公益委員の見解を取りまとめたものである。

目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを

公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。

また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり

示し、併せて総会に報告することとした。

さらに、政府において、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や、取引

条件の改善等に引き続き取り組むことを強く要望する。

また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定

によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、

発注時における特段の配慮を要望する。

 

 

 

 

 

1 平成 29 年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。

 

 

平成 29 年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安ランク 都道府県 金額

 

Aランク(+26円)

埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪

 

Bランク(+25円)

茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島

 

Cランク(+24円)

北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡

 

Dランク(+22円)

青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

 

 

2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成 29 年全員協議会報告の

3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会に

おける自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、

働き方改革実行計画(平成 29 年3月 28 日働き方改革実現会議決定)に配意した調査

審議が求められたことについて特段の配慮をした上で、総合的な審議を行ってきた。

今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、特に非正規雇用労働者の処遇改善が

社会的に求められていることを重視し、名目GDP成長率は前年に比べ低下したものの、

賃金改定状況調査結果第4表の賃金上昇率や春季賃上げ妥結状況等における非正規雇用

労働者及び中小企業の正規雇用労働者の賃金上昇率など賃金に関する指標が全般的に上昇

傾向にあること、影響率は上昇している一方、雇用者数等については増加傾向にあること、

地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があること等、

様々な要素を総合的に勘案し、検討を行ったところである。

目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の

審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する。

 

(2)生活保護水準と最低賃金との比較では、前年度に引き続き乖離が生じていない

ことが確認された。

なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号)

第9条第3項及び平成 29 年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その

時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖

離が生じていないか確認することが適当と考える。

 

(3)最低賃金引上げの影響については、平成 29 年全員協議会報告の3(2)及び

4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討して

いくことが必要である。

 

(4)目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が今年度の地方最低賃

金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。